私たち素人は「わぁすごい手織りだ!」だったのだが、プロの恵里子さんが驚かれていたのは手織り機の「幅」。
日本の機織りは身幅37cmが普通(着物の反物の幅)で、例外的に金襴でおられる袈裟などは70cmあまり。 日本人にとってはこれが扱いやすい=機織りがしやすい寸法として定着している。
ミャンマーでもいざり機をみたことがあるが、こちらはもっと狭い幅だった。
幅が広くなると、左右の端、真ん中で経糸・緯糸の調子が微妙に狂いやすくなり、機織りの難度が一挙に上がるのだという。
ところが、ここではどうみても1メートル20はある幅で布が織られている。 座って織るというイメージがあったけれど、作業をしていた二人の男性は腰掛けるというか、ちょっと腰を預けているだけという感じで、両足で機を操りながら、手で杼と経糸を操っている。 見せてもらったのは平織りの中に金糸で模様を織り込んでいるところ。平織りのところは目まぐるしく早く、模様のところでは慎重にでもリズムよく杼を走らせていく。 機織りのリズムはダイナミックでありながら、どこか繊細だ。
上を見上げるとパンチカードのような紙。おそらく日本の西陣織などで使うのと同じく紋様を指定している紙だろう。
経糸が絡まないように一巻きごとに糸の間に入れられている紙、これは糸が重なって絡み合うのを防ぐためのものだが、これは…どうやら牛乳パックのようなスベスベとした厚紙のようだ。恵里子さんに聞いてみると、日本ではポスターや模造紙を使うことが多いという。「なるほどね…こっちの方が使いやすそう。インドは本当になんでも先生ね」
手織りというと女性と思っていたので、工場主に聞くと「女性もいるよ。でも男性、女性はあまり関係ないね」とのこと。
「あの幅の織り機はすごく力がいるのよ」と恵里子さん。
さらに、織機で経糸を支えている部分が糸なのをみて「どこまでも糸に優しい織り機になっているのねぇ」と恵里子さんが呟く。理由を聞くとこの部分(写真の男性が掻き分けて顔を覗かせている部分です)が金属だと、糸が強く引っ張られてほつれたり切れたりするらしい。細い絹糸にできるだけテンションをかけながら、尚且つ絹糸を優しく労わる。そんな手織り機だという。

インドの機織り機は「幅」が広い!

糸の絡まり防止の紙

経糸を支える糸の間から顔を覗かせる職人
インドの手織り機(動画)